YUENたる所以 誰も深堀しないエアバッグの世界①

YUENたる所以 誰も深堀しないエアバッグの世界①

こんにちは。YUENサポートスタッフの長谷川です。昨今、猫も杓子もSDGs。リサイクル、アップサイクルなど環境に対しての活動が年々当たり前化してきてますよね。うちの小学生になる娘も学校で習ったのか、どうやら父親がしている仕事がSDGsの一環に含まれることに気づいたようで。

「お父ちゃんはエアバッグのリサイクルの仕事をしてるんか?」

と聞かれまして。

リサイクルではなくアップサイクルだとかいろいろと説明をし、

「へぇー」

とそれなりに感心した模様。


自分が娘と同い年くらいの頃にはそのようなことは一切考えておりませんでしたが、時代の変化と共に娘の成長を共に感じます。

SDGsを直訳すると「持続可能な開発目標」というもので、超簡単に言うと社会、経済、環境のバランスを大事にしてより良い未来を作っていこうというものですよね。

2016年から2030年にかけて、先進国も開発途上国も協力してやっていこう!というもので、17のゴールを設定し、国連がリードしながら世界中で意識、行動に移されて行っています。

この辺りはいろんなウェブサイトでも多数紹介されているので、これ以上は割愛しますが、世界中の人々や企業に責任がある問題で我々YUENにとってももちろん該当します。

とても大きなテーマな訳ですが、こういった大きな物事に対して立ち向かううえで、長谷川がとても好きな言葉があります。

「微力ではあるが無力ではない」

社会貢献活動においてよく用いられる言葉で、個人的にその通りだなと思う言葉でもあるんですが、紙ストロー1本使っても、世の中はよくなりませんし、変わりません。ビニール袋をエコバッグに変えても世界は変わりません。ただ、ほんの少しだけ変わるんです。大きな物事に対して微力さを痛感する一方で、全くの無力ではないと感じることも非常に大切なことだと思います。

選挙にも似てるなあと思うんですが、1票では簡単に政治は変わらないけど確かな重みは間違いなくあるんですよね。その1票の集まりが大きなうねりとなってムーブメントのような物を生み出す。SDGsやアップサイクルなどの環境活動も今、大きなうねりが生まれているように思います。

そんな大きなうねりが生まれつつある中、我々YUENが手掛けるアップサイクルブランド「rerer」は廃車となった車のエアバッグをアップサイクルし、バッグや雑貨類を作っているブランドです。今までもrererの特徴や活動について様々なブログにも書いてきました。


過去のrererについてのブログはコチラ

https://yuenstore.jp/blogs/article/tagged/rerer


今回はまた違った切り口で掘り下げていきたいなと思っています。

◆リサイクルの「特別扱い」であるエアバッグ

車のリサイクルについては、かなり明確に法律で決まっており、自動車リサイクル法という法律が存在します。

この部品はこうやって再利用する。。のような事が実は決まっているんですね。例えばボディやエンジンは溶かして鉄に戻そう!といったものです。

その中で、リサイクルするために言い方は悪いですが「厄介な物」として「特定リサイクル品目」という名で分類されているものが3つあります。それがフロン類、シュレッダーダスト、そしてエアバッグです。

なぜこの3つが特別扱いされているのかというと、環境負荷が高い物だったり、リサイクルするうえで非常に危険なことがあったりするからです。

そのため、この特定リサイクル品目は専門の業者が処理し、自動車メーカーなどが回収する責任があります。要するに多大なコストやリスクが伴う品目ということですね。

例えばエアバッグは普通の解体業者では回収することができず、なぜかというと爆発の危険性があるため、専門の業者が取り出さないといけないからです。とても恐ろしい。

そしてそのコストの一部は、私たち自動車ユーザーが車を購入するときに「リサイクル料金」という形で必ず支払っています。恐らく皆さんの車検証と共に「リサイクル券」というものが一緒に保管されているんじゃないかと思います。それが車の購入時にリサイクル料金を支払った証明となるものです。

そんな、取り出すだけでもコストがかかり、ただリスクもあるエアバッグ。これらを再資源化するとなるとさらにコストがかかります。自動車メーカーとしては悩みの種の一つでもあるわけです。

それらをコストのかかるリサイクルではなく、アップサイクルでさらに価値を上げて製品にしていこう、と始まったのがrererの取り組みです。


◆エアバッグをアップサイクルし、製品化する事の難解さ

そんなこんなで車のエアバッグをアップサイクルすることになった「rerer」ですが、具体的に言うと廃車工場から出る車のエアバッグを様々な色、鮮やか色に染色し、バッグや雑貨を作っています。簡単そうに言いましたが、これがまた非常に難解で。

工程としては大きく分けて「染色」「裁断」「縫製」の3工程で製品化するわけですが、従来の雑貨作りとは全く違う素材により、rererのモノづくりは難航します。

まずは染色から。

エアバッグをアップサイクルし、雑貨を作っているブランドは多くはないものの、ほかにも存在します。ただ鮮やかな色に染色しているブランドは見かけません。なぜか。

単純に思うように染まらないからです。

エアバッグは66ナイロンと呼ばれる特殊なナイロンを使用しており、防弾チョッキなどに使用されるバリスティックナイロンの原料だったり、他のナイロン製品と比較しても融点が非常に高くアイロンしても溶けなかったり、ちょっと普通のナイロンとは違います。

さらに、エアバッグは湿気を帯びるとうまく作動しないことから、生地自体に撥水性を持たせており、なおさら染まりません。

さらにさらに、車種や自動車メーカーごとにエアバッグは全然違うんです。生地が柔らかいものもあれば堅いものもある。薄め、厚めも違いがあり、撥水性の持たせ方もシリコンコーティングしているものもあれば、薬剤によって撥水性を持たせている生地もあります。

そうなると、普通に染めても染まらない。染まってもモノによって全く色合いが違う。生地が薄くてやわらかいものは濃く染まり、堅くて分厚いものは薄く染まる。シリコンコーティングされているものはかすれ感のある染まり具合になる、など個体差が満載でした。

特に黒を染めることが難しく、最初のサンプルでは黒に染めたつもりが薄いグレーのようになり、全く思うように染まりませんでした。

深く色を入れて意図した見え方にするために、高温高圧をかけて染色し、サンプル製作を重ねて、やっとのことで今の発色に至ったのです。

◆rererのエアバッグの発色の魅力

高温高圧で染色することから、鮮やかにはっきりとした発色を実現し、意図した表現が可能となりました。また、高温高圧をかける過程の中でエアバッグに深いしわや色むらが出るのですが、それが他のナイロン製品とは全く違う表情で、ほかにはない唯一無二の仕上がりとなりました。

また、先ほど少し書いたようにエアバッグは車種やメーカーによって全く違い、色の染まり具合に個体差が大きく出ます。

染色の過程での色むらとしわ、そしてエアバッグの厚みや撥水性の持たせ方による発色の違いによって、同じ色で染色しても二つとして同じものが無い商品が出来上がったのです。

長谷川も数々のrererの製品を目にしてきましたが、本当にひとつひとつ違いがあり、自分だけの一つ、を手にすることができるブランドだと自負しています。

さらに、実はエアバッグにはもともと生地に施されているステッチや、印字スタンプなど使用する生地の場所によって大きく表情を変えていきます。

今回は「染色」「裁断」「縫製」の3工程のうち「染色」についてご紹介しましたが、ステッチや印字スタンプのお話はまた別の機会に。



rererのアイテムはこちらからご覧ください

https://yuenstore.jp/collections/rerer

◆アップサイクルをいつも頭の片隅に

rererのアップサイクル活動は簡単に世界を変えるような大がかりな取り組みではありません。ただ、微力ではあるが無力ではないものなので、rererの製品を使い、その代わりに新たなバッグを購入することが無くなれば、少しだけ環境負荷は変わります。rererを使っていて

「これはエアバッグなんだよ」

と友人に話してみたら少しだけ友人も環境配慮について頭の片隅に残るのかもしれません。

かくいう長谷川もrererに関わり出してから、自家用車が10万キロを超え、購入から13年が経過し、買い替え時が訪れました。

ただ、致命的な故障もありませんし、愛着もあり無理して乗り換える必要もないよなと思う気持ちがあります。これはrererに関わりを持ったからこそなのかもしれません。

rererのアップサイクル活動単体で世界は変わりませんが、アップサイクル活動を頭の片隅においていただける人が増えたら、ほんの少しだけ世界が変わるのかもしれませんね。

 

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