
yuers スニーカーの第三勢力を目指す真摯なファクトリーブランド 前篇
共有
こんにちは。YUENサポートスタッフの長谷川です。
先日、我が家の玄関を整理しました。
そこで出てきたのが大量の靴、靴、靴…
私と奥さんはアパレル業界が長く、どうしても洋服と同時に靴もたくさん買ってしまいがち。加えてうちの子は小学生。年齢的に靴のサイズアウトも早くすぐに捨てたり売ったりすればよいのですが、どうしても溜まってしまうんですよね。
玄関の靴を見ていると、たくさんのブランドがあります。とはいえやはりNIKEとadidasが圧倒的に多い。なんとなく我が家の玄関はスニーカー業界の縮図のようだなと感じました。
職業柄、街を歩いていてもついつい靴に目が行ってしまうんですが、病院に行った時もついつい靴棚にある靴に目が行ってしまう。行く場所場所で、NIKEとadidasはどのような層の方でも皆さん履かれていて、やっぱりすごいブランドなんだなと思います。
NIKEの年間売上高は何と7兆円とも言われており、世界のスニーカーシェアの22%を占めるそうです。adidasが17%程で、この二つのブランドでスニーカー市場の約40%を占めています。車メーカーのSUZUKIやMazdaより売り上げは上です。すさまじいですね。
そりゃうちの玄関にもたくさんあるはずだと納得してしまいましたが、これってやや多様性に欠けると思うんです。
何でもそうなんですが、生態系のような形で多様性があり競争力が生まれて新しいものが生まれていく。消費者の選択肢も生まれますし、やはり圧倒的な強者が君臨し続けるのは業界として面白くないんです。
また、二次流通市場で「プレ値」が付きとんでもない価格でスニーカーが取引されているのもまた、需給のバランスが集中しすぎて、健全な市場とはいえないんじゃないかなと思います。
スニーカー業界の圧倒的2強であるNIKEとadidas。それに次ぐ存在が
・Skechers
・New Balance
・PUMA
・ASICS
辺りと言われています。そして第三勢力と言われ近年存在感を増しつつあるのが
・HOKA
・on
等のブランドです。
コンバースやバンズは意外と市場規模少ないんですよね。
このスニーカー第三勢力は歴史も浅いですが独自のクッション性能やデザインによって多くの消費者から高い支持を得ています。
スニーカー業界において「歴史」というのは意外と重要で、NIKEやadidasは有名プロスポーツ選手と共に歴史に名を刻み込んでいます。〇〇というプロスポーツ選手があの大会で優勝した時に履いていた、、、のようなことですね。そんなモデルがたくさん存在します。
価値が高いブランドほどそういったストーリー性を多く持っています。ROLEXやOMEGAはその時計をして深海○○メートルに到達、宇宙に初めて人類が言った時に、、などなどエピソードに事欠きません。
歴史の浅いブランドがこういった部分を真似しようとか、取り入れようと思ってもなかなか難しい。昨今増加中のインフルエンサーマーケティングのようなこともこういったストーリー性をつけていこうとする一環なのかもしれませんが、やはり「ローマは1日にしてならず」一朝一夕には歴史を作り上げることはできないですよね。
簡単に歴史は積みあがらないのは事実ですが、新進気鋭のブランドには柔軟に現代の需要に合わせたり技術を取り入れたりすることができる「小回りの良さ」みたいなところに強みがあると思っています。HOKAやonは先端技術とデザインの融合が広く評価されました。
そんな中、我々YUENがスニーカー業界の第三勢力となるべく、提案するスニーカーブランド「yuers」は歴史を尊重しつつも革新的な技術を取り入れ、徹底的にユーザビリティを追求したブランドです。yuersのデザインコンセプトは以下のように定義されています。
yuers|ユアーズは様々な時代の"カルチャーシーン"を彩ったクラフトマンシップに深いトリビュートを捧げ、伝統と革新を融合させることを目標とし、"ユーザビリティ""機能性"をキーワードにデザインされたスニーカーブランドです。
詳しくはコチラ
https://yuenstore.jp/blogs/article/yuers-product-characteristics
ということは。。
・各モデルになにかしらスニーカーの名作のベースとなるものがあるという事。
・時代性に合わせたアップデートのポイントがあるという事
ですよね。ここは長らくアパレル業界に従事してきた身にとっては非常に気になります。
ルイヴィトンでアートディレクターを務め、自身のブランド「Off-White」でも大成功をおさめた天才デザイナー、故ヴァージル・アブローもまた「3%アプローチ」と言う、既存のデザイン、すでにある形を3%だけ斬新に、現代的にアップデートする手法を好みました。
「そんなの、ちょっとだけ変えるだけじゃないか!」
と思う人もいるかもしれませんが、この「ちょっとだけの斬新さと時代性」がとても難しいんです。既存のデザインを変えることは誰だって出来ます。それが時代に求められる斬新さなのか否かがとても難しいことですし、ブランドの個性や考え方が色濃く出る部分だとも思います。
これはいくら考えても分かることではないですし、作った本人に聞くのが一番早い。ということでyuersをディレクションする株式会社EST代表の忠津にどのモデルをどうアップデートし、時代に最適化したものとしてyuersの商品を生み出していくのかを、YUENを運営する株式会社ESTのオフィスに伺いインタビューしてきました。
◆yuersを作った理由はただ理想を追求したいという純粋な欲求だった
株式会社ESTは大阪四ツ橋駅のほど近くにオフィスを構え、靴やカバンを中心にアパレルブランド向けのOEM・卸・企画製造、そして自社ECとしてYUENの運営を行っている会社です。
長谷川はYUENサポートスタッフとして従事しているものの、オフィスに頻繁に出勤するような働き方では無い為、わざわざインタビューの時間を取っていただきました。
オフィスはショールームを兼ねたつくりで多種多様なスニーカーのサンプルが所狭しと並ぶ中でインタビューが始まります。
長谷川「この度はお忙しい中、インタビューのお時間ありがとうございます。先日少しお話しさせていただきましたがyuersについての開発秘話みたいなところをお聞きしたく伺いました。お聞きしたいことはたくさんあるんですが、まずそもそものお話なんですけど、なぜyuersというブランドをやろうと思ったのか、ブランド開発の発端はなんだったんでしょうか?」
忠津「yuersは色々なことが重なりあって生まれたブランドなので、どこから説明したらいいか迷うんですけど、まず僕の話からしていきます。僕はこの業界で長年、たくさんのスニーカーを作ってきて、いろいろなデザインや機能などたくさんのブランドのリクエストを形にしてきました。」
長谷川「OEMですよね。そうですね。忠津さんはいろいろなブランドから依頼を受けてスニーカーを作ってきた。今でこそYUENなどの運営をしているけど、もともとESTはスニーカーのOEM事業が始まりだったと聞いています。」
忠津「そうですね。もちろんどこのブランドの靴を作ってきたとかは言えないけど、たくさんのブランドの靴を作ってきました。その中で、やはり僕らからするとブランドがお客様であり、ブランドの考えるデザインやイメージを形にすることがお仕事です。ブランドによってデザインのコンセプトもあれば、価格帯もある。ブランドについているお客様のニーズもある。ブランドによって大切にしている要素も違えば優先順位も違うわけです。」
長谷川「ブランドによって客層も違いますからね。同じジャーマントレーナーのようなデザインのスニーカーでもラグジュアリーブランドのものとスポーツブランドのものだと価格も素材も全く違いますもんね。」
忠津「そうなんです。そういう色々なブランドのリクエストを形にしていく中で、自分的にはこっちの素材の方がいいな、、とか、ちょっと値段上がってもこのソール使ったら履き心地良くなるのにな、、というシーンって結構あるんですよ。もちろん自分が思うことは提案はするんですけど、どの提案を選ぶかはお客様であるブランドが決めることなので、僕が良いと思う提案を選んでもらえるとは限らない。これは僕の考える提案が良いと言っているわけではなくて、ブランドによってのテイストやコンセプトによっても変わりますから。」
長谷川「なるほど。僕もアパレルの現場でたくさんのお客様を接客してきましたが、”良いジャケットってありますか?”って昔よく聞かれたんですよね。その「良い」っていうのが本当に人によって違う。丈夫な物、軽いもの、着心地がいいもの、ハンドメイドのもの、要するに価値を感じるポイントが人によって全く違う。」
忠津「そうですね。僕は長年そういう仕事をしてきて、たくさんのデザインや機能を形にすることができる。でも同時に自分が思う100%を形にすることは人様のブランドである以上できないこともある。それなら自分が思う100%を形にできるブランドをやればいい。と思ったわけです。純粋に自分が欲しい、買いたい、履きたいと思うものを作りたい。」
長谷川「純粋な欲求ですね。それでは特にyuersで実現したい要素はどういった点なんですか?そこが忠津さんらしさでもありyuersらしさでもあると思うので。」
忠津「ユーザビリティ。履き心地ですね。ユーザビリティとデザインの融合。」
長谷川「ブランドコンセプトの通りですね。ユーザビリティや機能性という部分においてはそこまでこだわるのは何故なんですか?」
忠津「諦めたくなかったというかベストを尽くしたかった。ファッションスニーカーで最も重要なのはやっぱりデザインなんですよね。でも履き心地とデザインどちらかを捨てないといけない、というわけじゃないと思うんです。」
長谷川「アパレルメーカーのOEMは履き心地よりデザインを優先する場合が多いということですか?」
忠津「スポーツメーカーが作るランニングシューズは徹底的に人体を研究してそのスポーツに見合った形を作るんですけど、アパレルメーカーが作るファッションスニーカーはそこでは絶対に勝てない。そもそも市場が違うんです。ただ、かっこよければ何でもいいとも思わないし、履き心地が悪くてもいいとも思わない。0点か100点の話ではないと思うし、ファッションスニーカーが履き心地とデザインを両立することは自分なら作れる、出来ると思ったので。」
長谷川「なるほど。それではyuersのスニーカーはデザイン、ユーザビリティを徹底的に追求する上で価格は気にせずベストな物を作るということですか?現時点で価格帯は2万円前後のものが多いと思うんですが、今後、高級ラインなども可能性はあるんでしょうか?」
忠津「そうですね。価格については気にせずベストなものを作ろうと思っています。ただ、価格を上げれば履き心地が良くなる、という単純なものではないので、デザインで高級な素材を使えば価格は上がってくるかもしれないですけど、現状の価格帯でデザインとユーザビリティの追求をしていくことはできると思っています。」
インタビューを通じて、ブランドを作る発端が「理想の追求」という所に非常に意外性を感じました。商売においてマーケットや需要を探るわけではなく、単純に自分の理想を追求する。
これはものづくりにおいてのマーケットインかプロダクトアウトか。yuersは長年ものづくりをしてきたファクトリーとして「良いものを作れば必ず必要とされる」という自負心が根底にあるように思いました。
後篇はyuersがスニーカー業界の第三勢力を狙う為のデザイン哲学とユーザビリティのこだわりや具体性についてインタビューしていきます。
yuers スニーカーの第三勢力を目指す真摯なファクトリーブランド 後篇
に続く